G-Tech

代表黒沢による連載コラム
「行政手続とテクノロジーを掛け合わせてみました」

2018-07-11 掲載

2018年6月1日に観光庁から住宅宿泊仲介業者、 いわゆる民泊プラットホーム向けにある通知が発出されました。

内容としては、住宅宿泊事業の届出番号や旅館業の許可が取得できていない物件についてはサイトに掲載をしないこと、また、その時点で入っている予約についても順次取り消しをすることが含まれておりました。

 

それを受けて、民泊プラットホーム国内最大手のAirbnbは、同日に番号が入力されていない物件について一斉にリスティングを 削除 (非公開に)する処理を行いました。

もともと国内物件のリスティングは6万~7万件とも言われていましたが、現在では1万件程度まで減ってしまっています。
また、6月15日~6月19日の予約をキャンセルすることも公表しました。

 

いよいよ民泊新法の施行が目前に迫った民泊手続について、
まだ届出手続がお済みでないホストの方向けにお届けいたします。

 

アジェンダ

1リスティングと予約の 削除

2今、何をすべきなのか

3旅館業と住宅宿泊事業

4住宅宿泊事業の届出が行いやすい物件とは

5住宅宿泊事業の届出のハードルが高い物

 


 

1リスティングと予約の 削除

冒頭でもお伝えしたとおり、6月1日に出た観光庁の通知を受けてAirbnbは、住宅宿泊事業法に基づく届出番号や旅館業法に基づく許可を取得していない物件について、リスティングの削除(非公開)と既に入っている予約のキャンセルに着手をしました。

Airbnbからホストの方向けに事前の連絡もありましたが、連絡から削除までの期間が短かったため、ホストのみならず訪日旅行を検討していた外国人の方々も混乱が生じています。

 

2今、何をすべきなのか

今後も民泊、ホームシェアをしたいと考えているのであれば、動くべき方法は1つでしょう。
つまり、住宅宿泊事業の届出を行うのか、旅館業の許可を取得していくか、あるいは場所によっては特区民泊を検討するか、許可申請・届出を行い、法制度に合わせた運営を行っていくということです。
いずれの方法もハードルは低くありませんので、ある程度時間とお金がかかってしまう可能性はありますが、事業を引き続き継続したいということであれば、迷っている暇はないかと思います。
いずれの手続の場合も、最寄の保健所で相談を受け付けてくれています。
あるいは、我々のような専門家へご相談いただくこともよいかと思います。
私どもは住宅宿泊事業や旅館業の実務手続を数多く手がけておりますので、きっと皆様のお力になれるかと思います。

3旅館業と住宅宿泊事業

簡単なそれぞれのおさらいです。
「旅館業」は、いわゆるホテルや旅館のためのライセンスで、年間365日営業を行うことが可能です。簡易宿所もこの旅館業の1種類になります。
旅館業は、建築基準や設備基準が厳しく、また建物の規模によっては用途変更などが絡んでくるため、それなりに時間と費用がかさみます。
また、免許を取得できるエリアも限られており、用途地域による建築制限があります。

「住宅宿泊事業」は俗に民泊新法と呼ばれているもので、用途地域の制限無く事業を行うことができ、建物の用途変更が不要なことが特徴として挙げられます。
一方で年間を通して最大180日までしか人を宿泊させられず、自治体によって日数等が制限されています。
実務上は消防設備の導入やごみ処理方法の問題、あるいは管理業登録している管理業者への委託が必要になるなど、180日しか営業できないのに対して、事業者に課せられる義務や手続が煩雑な点がハードル・デメリットとしてあげられます。

ちなみに、東京23区の多くは、住居専用地域や文教地区については週末のみしか営業ができないとする制限条例を制定しています。

特区民泊は、いわゆる国家戦略特区認定による緩和措置で、大阪市や大阪府、東京都であれば大田区のみで認定を行っています。
最低宿泊日数が2泊3日からとなっているのが特徴です。

4住宅宿泊事業の届出が行いやすい物件とは

現在、東京都内で民泊手続を行う場合、様々なハードルが課せられています。
中でも特にその比重が大きいのが、消防設備の導入です。
いわゆるホテル・旅館の基準で自動火災報知設備や避難誘導灯の導入をしていく必要があります。
既存の戸建住宅や共同住宅にはそのようなホテル旅館基準の設備が入っていることは少ないので、導入工事が必要となってきます。
自動火災報知設備も誘導灯も通常電気の配線工事を伴うものなので、数百万単位で工事費用がかかってくることも日常茶飯事です。
また、消防設備に加えて非常用照明の設置も義務となっているため、より難易度があがっています。
そんな中、一定規模以下の戸建住宅で、かつ家主が同居する形式の住宅宿泊事業については、このような設備導入が不要となることがあります。

したがって、一番着手しやすいのがこの家主同居型の戸建住宅タイプなのです。
この形式であれば管理業務を外部委託する必要もないため、イニシャルコストとしてはかなり抑えることができます。
逆にこれからホームシェア・民泊をはじめる場合はこういったタイプのものをご検討されると、スムーズにスタートできます。

また、家主不在型であっても戸建住宅については、特定小規模施設の特例が適用になる場合には、自動火災報知設備も無線式のタイプで基準をクリアするため、設備コストはだいぶおさえることが可能になります。

その次に着手しやすいのが、低中層(9~10階まで)マンションの自社一棟所有パターンです。
この場合、消防設備や非常照明工事、管理業務の外部委託(あるいは自社で取得をする)が必須となります。
一定のコストはかかりますが、収益性が見込めるのであれば、手続を進めることで事業開始までこぎつけることが可能です。

5住宅宿泊事業の届出のハードルが高い物件

逆に、ハードルが高い物件はここまで出てこなかった物件です。
まず最もハードルが高いのがいわゆる分譲マンションです。

部屋ごとにオーナーが異なり、管理規約での規定や管理組合の意思表示確認が必要となります。
分譲マンションでは専有部分の工事を入れる場合においても管理組合の同意が必要になることがあり、イニシャルコストをかけてまで行うメリットがほとんど無いのが実情です。
であれば、特別な設備導入が不要なマンスリーマンションとして賃貸に出すほうが懸命です。

続いてハードルが高いのが、11階以上の高層マンションタイプ。
消防法の規定で、マンションの1部に民泊施設が入ることになると、11階以上にはスプリンクラーが設置必須となります。
通常のマンションであっても11階以上はスプリンクラーの設置義務がありますが、単純なマンションとして建築をされていると、様々な特例規定によってスプリンクラーの設置が免除されている場合があります。
スプリンクラーを既存の建物に導入していくのは並大抵の工事ではなく、たとえばスプリンクラー用の水をストックする水槽の設置や、水槽から水をくみあげるポンプ・動力設備の設置など、先にあげた自動火災報知設備の導入と同じようにかなりの工事費用がかかることは間違いありません。
また、建物の構造によっては11階以上だけでなく、10階よりも下の低層階にもスプリンクラー設置が必要となり(※消防法令の改正により緩和される場合があります)、そこまでくると180日しか宿泊できない施設のためにそこまで費用を投入する必要があるのかという判断が出てきます。

※ スプリンクラー設置等の緩和措置について、「消防法施行規則等の一部を改正する省令」が平成30年6月1日に公布されています。
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h30/06/300601_houdou_2.pdf

賃貸マンション1室の届出も、設備工事の話が出てきますので、結局のところ工事費用や手続費用を入れて収益性をシミュレーションする必要が出てきます。

したがって、一番着手しやすいのがこの家主同居型の戸建住宅タイプなのです。
この形式であれば管理業務を外部委託する必要もないため、イニシャルコストとしてはかなり抑えることができます。逆にこれからホームシェア・民泊をはじめる場合はこういったタイプのものをご検討されると、スムーズにスタートできます。

法律が制定されて白黒はっきりしたのでこれから民泊・ホームシェアを始めたい方々、これまでの実績があったが、今回リスティングや予約を削除されてあせっている方々、まずはどうぞ私どもにご相談ください。
法律の規制上どうしてもできない物件もございます。 黒を白にすることではできませんが、方向性を一緒に探り、適法に運営していくための道筋を示すことはできます。 現在、建築基準法の改正も国会(第196回通常国会)で審議をされている段階です。揺れ動く法制度の中、よりよい宿泊施設をつくれる可能性を伸ばしていきたいと私どもも日々考え、活動しております。 健全な民泊・ホームシェア業界の構築のお手伝いをさせていただければと思います。